解説
骨粗鬆症、悪性腫瘍による溶骨性骨転移、高カルシウム血症、多発性骨髄腫などに対する治療薬として用いられているビスホスホネート(Bisphosphonate: BP)製剤の副作用としての顎骨壊死、骨髄炎がみられるものである。
第二世代以降のBP製剤は側鎖に窒素(N)を含み、メバロン酸経路においてファルネシルピロリン酸(FPP)合成を阻害し、破骨細胞の細胞骨格障害やアポトーシスを引き起こす。
臨床事項
- BP製剤の投与歴がある。
- 感染に伴う持続性骨露出や疼痛がある。
- 歯肉腫脹、排膿や歯の動揺が認められる。
- 無症状の場合もある。
病理組織所見
- 周囲に多量の菌塊、肉芽組織を伴った壊死骨がみられる。
- 鋸歯状の骨吸収が認められる。
- 骨吸収窩に破骨細胞はほとんどみられない。
- 肉芽組織に接する骨面に破骨細胞がみられることがある。
代表画像
乳がん骨転移の治療のためビスホスホネート製剤を服用していた症例
骨吸収部には粘膜上皮が侵入しており、壊死骨部表面は汚色で出血はほとんどみられない。
ビスホスホネート関連顎骨壊死(弱拡大)
骨小腔内の骨細胞が消失した壊死骨と多量の細菌塊が認められる。
骨小腔内の骨細胞が消失した壊死骨辺縁には多数の骨吸収窩がみられるが、破骨細胞は認められない。また、多量の細菌塊がみられる。
ビスホスホネート関連顎骨壊死(強拡大)
骨小腔内の骨細胞が消失し、層板構造を呈する壊死骨が認められ、その辺縁は不整で、多数の骨吸収窩がみられる。また、粘膜上皮が侵入し、壊死骨に接している部分もみられる。結合組織にはリンパ球浸潤も認められる。