解説
顎骨の炎症のうち病変の主体が骨髄にあるもので、経過、病変の広がりなどにより、以下に分類される。
- 急性顎骨骨髄炎(化膿性骨髄炎)
- 慢性顎骨骨髄炎(慢性化膿性骨髄炎、慢性硬化性骨髄炎、Garré骨髄炎)
臨床事項
- 根尖性歯周炎、慢性歯周炎、智歯周囲炎に継発する。
- 急性では、第一大臼歯の根尖病巣からの波及が多く、原因歯や隣在歯の動揺、打診痛、歯肉、粘膜、顔面皮膚の発赤、腫脹、膿瘍形成がみられる。進行すると弓倉症状、Vincent症状、リンパ節腫脹、発熱が認められる。やがて腐骨を形成し、腐骨分離にいたる。
- 慢性では無症状のことが多く、X線検査で不透過像を認め発見される。
- Garré骨髄炎は小児や若年者の下顎に多い。
病理組織所見
- 急性顎骨骨髄炎
- 膿瘍形成が認められる。
- 骨破壊や腐骨形成がみられる。
- 慢性硬化性骨髄炎
- 炎症性変化に乏しい。
- 線維骨や層板骨の不規則な増殖がみられる。
- 骨梁間には線維組織が認められる。
- Garré骨髄炎
- 皮質骨面に対して垂直方向に配列する新生骨梁が認められる。
- 新生骨梁は皮質骨面に対して平行に配列する場合がある。
- 非化膿性炎で、リンパ球や形質細胞の浸潤が種々の程度でみられるが、明らかでないこともある。
代表画像
CT像
- ガイド無し
- ガイド有り
病変部では腐骨が分離している。
病変部では腐骨が分離している。
顎骨骨髄炎(腐骨分離)
腐骨が周囲骨から分離している。
顎骨骨髄炎(弱拡大)
虫食い状に骨吸収がみられ、骨髄相当部には炎症細胞浸潤や線維化が認められる。
顎骨骨髄炎(強拡大)
破骨細胞による吸収が目立ち、骨小腔内の骨細胞はみられない。腐骨周囲には高度な炎症性細胞浸潤が認められる。
慢性硬化性骨髄炎
不規則な骨梁形成と骨梁間での線維形成と軽度な炎症細胞浸潤が認められる。
Garré骨髄炎(Garré osteomyelitis)
新生骨梁は皮質骨に対して垂直方向に配列する。
骨梁間の線維性結合組織の炎症性細胞浸潤は乏しい。