解説
胎生期の鰓溝由来の上皮残遺や埋没上皮に関連するとされる発育囊胞である。
頸部リンパ節の発生途中に耳下腺組織が迷入し、その上皮が囊胞化したとする説もある。
胸鎖乳突筋前縁に沿って発生するものは側頸囊胞といわれる。
口腔では口底部や舌下面にみられ、口腔リンパ上皮性囊胞といわれる。
臨床事項
- 20~40歳代に好発する。
- 側頸部では境界明瞭、可動性のある無痛性腫瘤を呈する。
- 波動を触知する。
- 口腔粘膜部では数mm大である。
病理組織所見
- 内腔側は重層扁平上皮ないし円柱上皮、立方上皮で裏装される。
- 中層はリンパ濾胞を伴うリンパ組織からなる。
- 外層は線維性結合組織からなる。
- 内腔には角化物がみられる。
代表画像
側頸囊胞
下顎角下の側頸部に鶏卵大の膨隆がみられる。
鰓裂囊胞(弱拡大)
非角化ないし錯角化型重層扁平上皮により裏装され、上皮下は多数のリンパ濾胞を伴うリンパ組織からなる。
鰓裂囊胞(中拡大)
- ガイド無し
- ガイド有り
錯角化重層扁平上皮により裏装され、上皮下にはリンパ濾胞を伴うリンパ組織がみられ、その下には線維性結合組織が認められる。
錯角化重層扁平上皮により裏装され、上皮下にはリンパ濾胞(矢印)を伴うリンパ組織がみられ、その下には線維性結合組織が認められる。
鰓裂囊胞(強拡大)
囊胞壁は錯角化重層扁平上皮により裏装される。