解説
歯肉に生じる歯原性発育性囊胞で、幼児型と成人型とに分けられる。
幼児の歯肉囊胞
臨床事項
- 生後3か月までの新生児・乳児の顎堤粘膜内に多発性に生じる。
- 黄白色調を呈する小腫瘤(1~3mm程度)である。
- 歯堤上皮遺残(Serres上皮遺残)に由来し、上皮真珠ともいう。
- 自然に消失する。
病理組織所見
- 過角化ないし錯角化重層扁平上皮で裏装され、上皮下は線維性結合組織からなる。
- 囊胞腔内に層状の角化物が充満する。
成人の歯肉囊胞
臨床事項
- 40~50歳代の下顎小臼歯部の頰側歯肉に好発する。
- 無痛性で半球状の腫瘤を呈する。
- 歯堤上皮遺残由来あるいは口腔粘膜上皮由来とされている。
- 切除術が行われる。
病理組織所見
- 菲薄な非角化重層扁平上皮で裏装され、上皮下は線維性結合組織からなる。
- 幼児の歯肉囊胞とは異なり、囊胞腔内に層状の角化物はみられない。
その他
- 幼児の歯肉囊胞は上皮真珠ともいわれるが、歯肉囊胞、エプスタイン真珠、ボーン結節を一括して上皮真珠という場合がある。
- エプスタイン真珠は、口蓋突起癒合部に封入された遺残上皮に由来するもので、乳児の口蓋正中部粘膜に発生する多発性囊胞のことである。
- ボーン結節は口蓋腺に由来し、口蓋に散在的に発生する囊胞のことである。
代表画像
幼児の下顎前歯部
- ガイド無し
- ガイド有り
顎堤粘膜に形成された小囊胞
白色の1~3mm大の小隆起として認められる。
顎堤粘膜に形成された小囊胞
白色の1~3mm大の小隆起(矢印)として認められる。
幼児の歯肉囊胞
- ガイド無し
- ガイド有り
裏装上皮は正角化を呈し、囊胞腔には角質物質が充満する。
裏装上皮は正角化を呈し、囊胞腔には角質物質(★)が充満する。