解説
囊胞上皮内に腺管構造がみられる歯原性の発育性囊胞である。
臨床事項
- 中年以降の下顎前歯部に多い。
- 初期には無症状であるが、増大すると顎骨の膨隆が認められる。
- 囊胞に隣接する歯は生活歯である。
- 単純な摘出や掻爬術では再発する場合があり、皮質骨の破壊を伴うことから侵襲性の性格が示唆される。
- 単房性ないし多房性の境界明瞭なエックス線透過像を示す。
病理組織所見
- 囊胞壁は非角化重層扁平上皮ないし立方上皮で裏装され、上皮下は線維性結合組織からなる。
- 裏装上皮には導管様構造、小囊胞構造、粘液細胞や線毛が認められる。
- 裏装上皮の最表層の一部に立方状ないし低円柱状細胞がみられる。
- 裏装上皮には肥厚を示す部分が認められる。
- 線維性結合組織中には軽度の炎症性細胞浸潤がみられることがある。
- WHO(2017年)では以下の10項目の組織所見のうち7項目を満たすことを提唱している。
すべての症例:(1)さまざまな厚さの裏装上皮(数層の扁平あるいは立方状細胞~厚い重層扁平上皮)、(2)囊胞腔側の立方状ないし低円柱状細胞(hobnail細胞)。
ほとんどの症例:(3)上皮内微小囊胞、(4)内腔側細胞のアポクリン化生、(5)基底・傍基底細胞層における明細胞の出現、(6)囊胞腔側への乳頭状突出、(7)粘液細胞。
その他:(8)上皮細胞の渦巻状配列、(9)線毛上皮細胞、(10)複数の囊胞形成。
代表画像
腺性歯原性囊胞
小囊胞様ないし導管様構造、粘液細胞がみられる。
線毛上皮、小囊胞様構造がみられる。
腺性歯原性囊胞(PAS染色)
上皮内の粘液細胞はPAS染色陽性を示す.