解説
咬耗以外の慢性機械的刺激により歯の損耗をきたしたものである。
臨床事項
- 原因として不適切な歯磨きが最も多く、その他に義歯床縁やクラスプの接触による摩耗、楊枝、爪咬み、パイプによる習慣性の摩耗、吹管奏者、硝子吹管工、クギ、針などをくわえる大工、裁縫師、靴職人など職業性の摩耗がある。
- 不適切な歯磨きでは唇頬側歯頸部に溝状、皿状、楔状などの欠損がみられる。
- 欠損面は滑沢である。
- しばしば象牙質知覚過敏症を引き起こす。
病理組織所見
- 摩耗面直下には不透明象牙質(Opaque dentin)がみられる。
- 歯髄には第三象牙質(病的第二象牙質)の形成がみられる。
その他
- 楔(くさび)状欠損(Cuneiform defect / Wedge-shaped defect : WSD)
過度の歯ブラシの横磨きにより、唇頬側歯頸部に楔状の欠損を生じる。 - アブフラクション(Abfraction)
歯磨き損耗と咬合時の応力によるエナメル質の小破折を伴う欠損のことをいう。
代表画像
歯頸部の磨耗(楔状)
歯頸部に楔状の欠損がみられる。
歯頸部の磨耗(研磨標本)
- ガイド無し
- ガイド有り
摩耗面は楔状に欠損し、歯髄にかけて不透明象牙質がみられ、その歯髄側端には第三象牙質の形成が認められる。
摩耗面は楔状に欠損(矢印)し、歯髄にかけて不透明象牙質(★)がみられ、その歯髄側端には第三象牙質(TD)(病的第二象牙質)の形成が認められる。
- E:エナメル質
- C:セメント質