先天(性)歯 Congenital tooth

歯の発育異常

解説

最初に下顎乳中切歯が生後6~8か月頃に萌出し始めるが、それ以前に萌出したものである。

  • 出生時に既に萌出:出生歯(Natal tooth)
  • 出生後1か月以内に萌出 :新生歯(Neonatal tooth)

臨床事項

  • 多くは下顎乳中切歯であるが、過剰歯のこともある。
  • 歯根形成が不十分なため歯の動揺がみられる。
  • 自然脱落することがある。
  • 齲蝕に罹患することがある。

病理組織所見

  • 歯根形成が不十分である。
  • エナメル基質の残存や石灰化不全が認められる。
  • 象牙質の形成が不十分なため菲薄で、歯髄腔は広い。

その他

  • 先天歯でも形成発育が正常な場合もある。
  • 舌下面に褥瘡性潰瘍 (Riga-Fede病) を引き起こす。
  • 授乳時に母親の乳頭部咬傷やそれによる感染症の原因となる。

代表画像

早期萌出乳歯(先天歯)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

出生時に既に下顎乳中切歯が萌出していた。

出生時に既に下顎乳中切歯が萌出していた(矢印)。

早期萌出乳歯(先天歯)、Rega-Fede病

出生時に下顎乳中切歯の萌出が認められる(出生歯)。

  • ガイド無し
  • ガイド有り

先天歯の機械的刺激による舌下面の褥瘡性潰瘍(Riga-Fede病) が認められる。

先天歯(白矢印)の機械的刺激による舌下面の褥瘡性潰瘍(Riga-Fede病) (黄矢印)が認められる。

抜去した先天歯(自然脱落ではない)、(脱灰標本)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

象牙質は薄く、歯髄腔が広く、歯根は未完成の状態である。

象牙質(▲)は薄く、歯髄腔が広く(☆)、歯根は未完成(白矢印)の状態である。

抜去した先天歯(脱灰標本)歯冠部の拡大

エナメル質は低石灰化状態で、エナメル基質の残存が認められる。

歯冠部では象牙細管の走行を認めるが、一部で不明瞭である。

早期萌出乳歯(先天歯)

  • ガイド無し
  • ガイド有り

根尖側では象牙細管の欠如・不明瞭化や細胞の封入がみられる。

根尖側では象牙細管の欠如・不明瞭化や細胞の封入(矢印)がみられる。