解説
病理組織所見
①濾胞型
- 最も典型的なエナメル上皮腫である。
- 腫瘍実質の胞巣は濾胞状(小球や袋状)を示す。
- 胞巣の内部はエナメル器の星状網に類似したエナメル髄様の構造を示す。
- 胞巣の辺縁部はエナメル芽細胞様の円柱状ないし立方状細胞が柵状に配列し、核は内側に偏在する。
- 実質囊胞がみられる。
- 実質囊胞を有する胞巣は相互に癒合し、増大する(単囊胞化傾向)。
- 以下の亜型がある。
棘細胞型、顆粒細胞型、基底細胞型、類腱型
②叢状型
- 濾胞型に次いで典型的で、歯堤を模倣する。
- 叢(草むら)を呈することによる名称で、腫瘍は索状、シート状をなして不規則に連続し、網目状構造を示す。
- 胞巣の辺縁部にはエナメル芽細胞様の円柱状ないし立方状の細胞が柵状配列するが、しばしば不明瞭である。
- 胞巣の内部はエナメル器の星状網に類似したエナメル髄様の構造が太い網目状、シート状部分で認められる。
- 間質は水腫性変化を伴う線維性結合組織からなる。
- 間質囊胞や実質囊胞がみられる。
③壁性単囊胞型(unicystic mural type)
- 2005年のWHO分類で単囊胞型のうちの壁性(mural type)は 2017年のWHO分類で通常型に含まれることになった。
- 内腔面を裏装する腫瘍性上皮が外側の線維性結合組織に嵌入、浸潤する。
- 再発傾向が高く、luminal typeやintraluminal typeのように再発傾向が低い単囊胞型とは異なる。
代表画像
パノラマX線画像
- ガイド無し
- ガイド有り
下顎右側大臼歯部から下顎枝に境界明瞭な多房性の透過像が認められる。
下顎右側大臼歯部から下顎枝に境界明瞭な多房性の透過像(破線)が認められる。
濾胞型(弱拡大)
- ガイド無し
- ガイド有り
腫瘍は骨梁間からさらに顎骨外に浸潤し歯肉粘膜に達する。
腫瘍は骨梁間からさらに顎骨外に浸潤し(破線)歯肉粘膜に達する(★)。
濾胞型(中拡大)
- ガイド無し
- ガイド有り
腫瘍胞巣は濾胞状(小球や袋状)を呈する。
胞巣内部はエナメル器の星状網に類似したエナメル髄様の構造を示す。
胞巣辺縁部はエナメル芽細胞様の円柱状、立方状細胞が柵状に配列する。
実質囊胞や扁平上皮化生が認められる。
腫瘍胞巣(★)は濾胞状(小球や袋状)を呈する。
胞巣内部はエナメル器の星状網に類似したエナメル髄様の構造を示す。
胞巣辺縁部はエナメル芽細胞様の円柱状、立方状細胞が柵状に配列する。
実質囊胞や扁平上皮化生が認められる。
叢状型
腫瘍は索状をなして不規則に連続し、網目状構造を呈する。
胞巣内部はエナメル髄様の構造を示す。
胞巣辺縁部はエナメル芽細胞様細胞が配列する。
間質は水腫性変化を伴う線維性結合組織からなる。
間質囊胞がみられる。
瀘胞型と叢状型
瀘胞型と叢状型が混在し、扁平上皮化生も認められる。
壁性単囊胞型
腫瘍性上皮が腔の内面を裏装し、腫瘍胞巣が外側(囊胞壁の線維性結合組織)にみられる。
このタイプは2017年WHO分類で、単囊胞型から通常型に分類が変更された。
囊胞壁内腔側から外側に向けて通常型のエナメル上皮腫(叢状型、濾胞型)の胞巣が浸潤するため、治療は通常型のエナメル上皮腫と同様に扱われる。
顆粒細胞型
好酸性の細顆粒状細胞質をもつ細胞からなり、胞巣辺縁にはエナメル芽細胞様細胞の柵状配列が認められる。
類腱型
膠原線維中に胞巣状をなして増殖する。胞巣の周囲には一層の粘液様基質に富む線維性結合組織がみられる。胞巣内部には紡錘形細胞の束状ないし渦巻き状の配列が認められる。