解説
口腔に生じる悪性腫瘍の大多数を占める。
喫煙、飲酒、ウイルス感染などと関係するとされる。
臨床事項
- 50歳以上の男性に多い。
- 舌側縁、下顎歯肉、口唇、上顎歯肉、頬粘膜、口底に多い。
- 白斑、紅斑、潰瘍状、隆起状、乳頭状などを呈する。
- 頸部リンパ節に転移をきたす。
- 遠隔転移は肺、骨、肝に多い。
病理組織所見
- 被覆粘膜上皮から連続して深部に浸潤、増殖する。
- 分化度による分類
高分化型:角化が明瞭で、癌真珠形成が多くみられ、細胞異型は比較的経度である。
中分化型:角化は中等度で、癌真珠形成はやや少なく、細胞異型も中等度である。
低分化型:角化傾向に乏しく、癌真珠はほとんどみられず、細胞異型は高度である。 - 特殊型
- 類基底扁平上皮癌
- 紡錘細胞扁平上皮癌
- 腺扁平上皮癌
- 孔道癌
- 疣贅状扁平上皮癌
- リンパ上皮癌
- 乳頭状扁平上皮癌
- 棘融解型扁平上皮癌
鑑別疾患
- 扁平苔癬
- 白板症
- 紅板症
代表画像
舌癌
舌側縁の易出血性の腫瘤状病変で、周囲に硬結がみられる。
舌癌切除組織割面
舌側縁から深側に向けて浸潤、増殖する腫瘍がみられる。
舌癌(扁平上皮癌、弱拡大)
腫瘍はシート状、索状、胞巣状をなして筋層内へ浸潤・進展する。
舌癌(扁平上皮癌、強拡大)
癌真珠の形成を伴う扁平上皮癌の筋層内浸潤がみられる。
高分化型扁平上皮癌
分化した角化傾向の強い細胞の増殖からなり、癌真珠が多くみられる。
中分化型扁平上皮癌
中等度に分化した細胞の増殖からなり、癌真珠が散見される。
低分化型扁平上皮癌
角化傾向に乏しく癌真珠はみられず、核分裂像が散見される。
細胞間接着が弱く、異型の強い細胞のびまん性増殖がみられる。
孔道癌(弱拡大)
内腔に角化物を容れた小窩や深側に向けて陥入する孔道様の構造がみられる。
孔道癌(強拡大)
中に角化物を容れ孔道様の構造を呈して浸潤する。
疣贅状扁平上皮癌(弱拡大)
疣贅状、乳頭状に外向性に増殖する。上皮脚は太い索状(象の足状、舌状にたとえられる)をなして粘膜固有層に向けて圧排性に増殖する。
疣贅状扁平上皮癌(強拡大)
粘膜固有との境界は明瞭で、明らかな浸潤はみられず、細胞異型は軽度である。