解説
唾液成分の溢出、停滞によって生じる唾液由来の粘液成分を含有する囊胞状病変である。
臨床事項
- 誤咬しやすい下唇に好発する。
- ラヌーラ(ガマ腫):舌下腺、顎下腺の排泄障害により口底部に発生する。
- Blandin-Nuhn囊胞:舌尖下面部の前舌腺に発生する。
- 組織学的分類
- 溢出型(偽囊胞):導管などが損傷し周囲組織に流出した唾液が肉芽組織により被包されたもの。
- 停滞型(真性囊胞):導管が閉塞し、唾液が導管内に貯留し、導管が拡張したもの。
病理組織所見
- 溢出型
粘液様物質とそれを貪食する泡沫細胞(マクロファージ)、炎症性細胞浸潤、毛細血管、線維芽細胞増生などからなる肉芽組織がみられる。 - 停帯型
- 著明に拡張した導管内に粘液様物質の貯留やマクロファージが認められる。
- 拡張した導管は、立方・円柱上皮などからなる数層の上皮により裏装される。
鑑別疾患
線維腫、類皮・類表皮囊胞
代表画像
粘液囊胞
下唇の粘膜面に膨隆がみられる。
Blandin-Nuhn囊胞
舌尖部下面に膨隆がみられる。
ラヌーラ(ガマ腫)
口底部に膨隆がみられる。
溢出型粘液囊胞(弱拡大)
粘膜上皮直下には漏れ出した唾液と拡張導管を有する口唇腺組織が認められる。
溢出型粘液囊胞(中拡大)
- ガイド無し
- ガイド有り
粘膜上皮直下に粘液様物質(唾液)や炎症性細胞浸潤を伴う肉芽組織が認められる。その深側には拡張した導管を伴う唾液腺組織がみられる。
粘膜上皮直下に粘液様物質(唾液)や炎症性細胞浸潤を伴う肉芽組織が認められる。その深側には拡張した導管(白矢印)を伴う唾液腺組織がみられる。
溢出型粘液囊胞の肉芽組織(強拡大)
- ガイド無し
- ガイド有り
粘液様物質を貪食した泡沫状細胞や、炎症性細胞浸潤が認められる。
粘液様物質(★)を貪食した泡沫状細胞(白矢印)や、炎症性細胞浸潤が認められる。
停帯型粘液囊胞(中拡大)
- ガイド無し
- ガイド有り
囊胞は、停帯した唾液による拡張した導管がみられ、導管上皮による裏装が認められる。
囊胞は、停帯した唾液による拡張した導管がみられ、導管上皮による裏装(白矢印)が認められる。