解説
腫瘍実質が歯胚の上皮成分、すなわちエナメル器や歯堤を模倣し、様々な程度の分化を示す上皮性腫瘍である。
歯原性腫瘍の中で歯牙腫と並んで発生頻度が高い。
臨床事項
- 下顎の方が上顎よりも多く、下顎骨の大臼歯部から下顎角・下顎枝部に好発する。
- 通常型の組織像である濾胞型と叢状型は20~30歳代に好発し、性差はない。
- 単囊胞型のうち埋伏歯を伴う場合は10歳代の男性にやや多く、埋伏歯を伴わない場合は30歳代の女性にやや多いとされる。
- 骨外型/周辺型は50歳以上に多く、男女比は約2:1で男性に多い。
- 発育は緩慢である。
- 増大すると顎骨は頰舌的に膨隆し、皮質骨の菲薄化により羊皮紙様感を触知する。
- 歯根尖の吸収を認める。
- X線所見で、境界明瞭な単房ないし多房性の透過像を示し、頰舌的な増大や歯根尖の吸収を認める。
分類
病理組織所見、割面の肉眼所見、発生部位および転移の有無などにより下記のように分類されている(WHO、2017年)。
- エナメル上皮腫(通常型)
濾胞型(亜型:棘細胞型、顆粒細胞型、基底細胞型、類腱型)
叢状型
壁性単囊胞型(unicystic mural type) - 単囊胞型
内腔裏装性(luminal type)
内腔突出性(intraluminal type) - 骨外性/周辺型
- 転移性エナメル上皮腫